暮らしの課題都市の狭小地。施主は一人で事業と技術を積み上げてきたが、その蓄積は本人の代で途切れ、住まいも世代が変われば壊される。“自分が消えると、積み上げたものも家も失われる”——その不安が、この自邸の出発点だ。
図面による解敷地に最初から立つ既存のアカシアを“最初の住人”として保存し、家を木に開いて囲う L 字配置とする。土間・縁側・中庭、そして木の幹を正面に切り取る“継承の定点窓”が、世代をまたいで同じ木を見続ける視点を固定する。可変平面は子・弟子・他人へと用途を変えて住み継げ、焼杉の躯体は経年で深まり、スクリューパイル基礎は更新・移設を容易にする。屋根の太陽光と V2H が、災害時もこの家だけは灯りを継ぐ。
暮らしの変革・社会へ家が“終わる器”から“継ぐ装置”へ変わる。木が世代の定点になり、住み手が変わっても物語は途切れない。設計から確認申請相当書類・省エネ・構造適合までを一人の作家が BIM(bim.house) で一気通貫に起こせること自体が、“図面が個人の人生と時代を継ぐ”という本賞テーマへの回答になる。